エッセイ

Essay-5
駒沢配水塔

世田谷・駒沢配水塔は不思議な建造物だ。
住宅街の細い路地の先にまるで時間を飛び越えてきたような巨大な不思議な建物が目に飛び込こんでくる。
それが、駒沢配水塔という建造物だ。

金網越しに近づいて見てみると、円筒形のコンクリート打ち放しに装飾の付け柱が付き、屋上とおぼしき部分には、ガラスの球形の照明器具があってまるで王冠のようにみえる。それが下手をすれば無粋になりがちな建物に、女性的な優雅な印象を与えている。

この給水塔は大正13年に竣工し現在も災害時の緊急用として貯水している現役の貯水施設だ。
都内には他に、昭和3年完成の中野・野方配水塔と昭和6年完成の板橋・大谷口配水塔があるが、残念なことに大谷口配水塔は取り壊しが決まったそうなのである。

この駒沢給水塔の運命はいかにと思ったところ、保存を訴える会があって、今のところ保存の方向で水道局も考えているらしい。

街のランドマークとしていつまでも残ってほしい建物だ。

<家づくりの会「家づくりニュース 2005年8月号」掲載>