エッセイ

Essay-7
私の設計手法 長持ちする居心地のよい家を造る

~長持ちする家~

尊敬する建築家吉村順三が「将来を洞察し責任を持つのも建築家の仕事である。そのためには長持ちする建築でなければならない」と言っていますが、居心地のよい愛着のもてる家を造り、手を入れながら長く住んでもらいたいというのが私の願いでもあります。

長持ちするためにはしっかりした構造を骨格に持つ事は言うまでもありませんが、建築材料も特殊なものを使わず、将来にわたって流通している材料、例えば、無垢の木や紙といった自然素材を使うようにしています。

というのは、あまりに特殊な材料を使うと、将来のメンテナンスが出来なくなる可能性がありますし、本物の材料は傷が付いてもどこまでも本物で、使い込む楽しさ、古びる美しさがある材料だと思うからです。そして室内汚染という意味からも安全な材料であるからです。

~自然の力をとりいれた家~

また、出来るだけ自然の力を取り入れた住宅にしたいとも思っています。冬の日差しを積極的に取り入れ、夏は日射を遮る、また風通しのよいプランを平面ばかりでなく断面的にも考える。そんな住まいの基本を忘れずに、積極的に自然のエネルギーを取り入れた設計をしようと思います。

自然エネルギーといえば太陽の熱を利用した床暖房や、雨水をタンクに溜めて庭木の水やりや洗車に使うといったちょっとした事まで、なるべく機械に頼らない生活が送れればいいなと考えています。室内の温熱環境について言えば、断熱・気密ばかりが注目されていますが集熱そして蓄熱といったことが必要だと最近ますます思います。そのことを考慮した住宅を、建て主の方のご理解が得た上で設計していきたいと思っています。

~環境を考慮した家~

一つの住宅が周辺によい影響を与え、その地域のまちなみにも貢献できる、そのような住宅をつくっていきたいとも考えています。そのためにはなるべくまちに閉鎖的につくらずに、出来る範囲で街に開いた住宅、そして敷地状況にもよりますが、なるべく木々の緑を植えて、その家の環境だけでなく街並みにも潤いを与える住宅を設計していきたいと思います。

住宅は勿論建て主の方の持ち物ですが、まちをつくる一員でもあるわけで、住環境のよいまちは資産価値という観点から見ても重要な事だと思うからです。

再び建築家の吉村順三の言葉。
「建築家として、もっともうれしいときは建築が出来そこへ人が入って、そこでいい生活が行われているのを見る事である。
日暮れ時、一軒の家の前を通ったとき、家の中に明るい灯がついて、一家の楽しそうな生活が感ぜられるとしたらそれが建築家にとっては、もっともうれしいときなのではあるまいか。」

そういう気持ちを持ち続けて設計をしていきたいと思っています。

<家づくりの会「家づくりニュース 2007年1月号」掲載>